露西亜海軍 太平洋艦隊 砲艦 コレーツ
1/350 261BOX  Russian Gunship Korietz

砲艦「コレーツ」は1886年にベルグサンド/ストクホルム造船所で建造された帝政ロシア海軍の航洋砲艦で、艦銘は「高麗」を意味し、同型艦「マンジール」(こちらは「満州」を意味する。)と共に極東に回航され、第1太平洋艦隊に配属されました。

日露両国の国交が断絶された直後の1904年(明治37年)2月8日、僚艦「ワリヤーグ」と共に仁川港に投錨中、帝国陸軍先遣隊1個師団の上陸支援を行なった瓜生外吉少将率いる第1艦隊第4戦隊に港外に退去を命じられ、沖合いで待つ巡洋艦「浅間」以下6隻の巡洋艦艦隊と砲火を交えるが、所詮は多勢に無勢、到底太刀打ちできず「ワリヤーグ」共々損傷しながら一旦港内に逃げ込んだものの「コレーツ」は我が水雷艇の放った魚雷が命中し、浸水がひどくやむなく自ら火薬庫に火を放ち爆沈し18年の生涯を閉じました。

キットは261BOXと云うロシアのガレージキットメーカーの製品で5年程前に関西方面出張の折、大阪市内の専門店ホビーランドにて購入しました。しかしキット内容は粗悪な材質のレジンと猛烈に硬いエッチングパーツに閉口し、購入当初は「お蔵入り」キットでしたが、ズベズタの「ワリヤーグ」が先に完成した事で「…いつかはお前も完成させて在りし日の仁川艦隊を無限蒸気艦に登場させてやるよ。」と箱から船体を取り出し、漸く着工、完成までに4ヶ月費やしました。
先ずはレジンキットの常である下ごしらえとしてサーフェーサーによる下地処理、最初は缶スプレーでサッと全体に吹き付けましたが、レジンの地肌の時には確認できなかった無数の気泡が表れました。溶きパテや瓶入りサーフェーサーでまめに筆塗りして気泡を埋め乾燥後にペーパー処理、ところがその後に新たな気泡が表れ再度気泡埋め!この処理を繰り返す事10数回!! イヤァ、流石に参りました。このメーカーのレジンはまるで「洲の入った湯豆腐」でした!
何とか下地処理を終えて船体の塗装作業。始めに全体をホワイトで吹き付け、次に木甲板の塗装です。基本色のタンを吹いてからトーンを変えた甲板色をランダムに筆塗り。
この作業は毎度お馴染み「国親父スタンダード」です。
甲板のモールドは凹モールドですが彫りが甘いので筆塗りにはチョイと苦労しました。更に油彩のローアンバーやバートンジェンナでウォッシング、半乾きの状態で余分な塗料を拭き取り、最後にアクリル系のクリヤーオレンジを全体に吹き付けトーンを整えます。この最終仕上げの吹き付け加減が決め手で出来の良し悪しが決まります。毎回やっておりますが今回の出来は…。
  木甲板を仕上げてから甲板部分をマスキング、舷側の塗装ですが当時コレーツの少ない写真を確認すると全体がホワイトであったり、今回製作したブラックであったりと時期によって異なっていますが、キットのパッケージに使用された絵画のイメージとしました。
但しブラックではコントラストがきついので個人的な好みでミッドナイト・ブルーで仕上げています。吃水線境目の白帯はロシア海軍の伝統なのでしょうか。同国現用艦にも見られますね。 黒と赤の船体色に一際映える白帯は煙突の黄色とともに色映えして小さいながらとてもシックな艦容にみえますね。

  マスト類も全てレジンですが勿論、まともに使える代物ではありません。ここは全てグラスファイバーの棒に作り替えました。 グラスファイバー棒は釣具店で購入しましたが太さは数種類あるようです。切断には少々コツが要りますが帆船のメインマストやヤードなどテーパー表現にはもってこいの素材でリギングでも多少テンションを掛けても曲がる事はありません。 絶好の素材ですが購入先の釣具店が閉店した為現在入手困難!
  リギング類は帆船模型の出来を左右する重要な部分です。生かすも殺すもこれ次第。
いい加減な作りも出来ないので帆船模型関係の本を2冊購入して斜め読みながら一夜漬けの知識でそれらしく製作。ラット・リンは某ネット通販で扱っていた外国メーカーのエッチングと最近アオシマより再販となった「日本丸」(石炭運搬船時代)のキットに附属していたエッチングパーツを利用しました。その他の静索や動索類は極細銅線やナイロンテグスを用いブロック類は0.25ミリのプラペーパーをポンチで打ち抜いたものを使用しています。
本格的なリギングには程遠いのですが何とか雰囲気だけはあるのではと…。
リギングは必須アイテムでしたが一番悩んだのはセール(帆)です。過去に帆船模型を製作した経験は皆無に等しい国親父にとって、セールを再現するか否か。先ずはセールの材質、本格的な帆船模型は全て布地を使用しており先の帆船模型製作本にもその製作法が記載されていますが、1/350に適する生地は見当がつかないので二つ折りにした雁皮紙を水性塗料で染め上げた紙製のセールを製作しました。フォアやジブセールは展張り状態とし、縁の補強部分には0.1ミリ銅線を入れて癖を付けセールが風で膨らんでいる状態を再現してみました。トップスルヤード、ゲルンヤード、メインステイスルやスパンカーなどのセール類は畳んだ状態にしてみました。
アップ画像では粗が見え、部分的に帆船模型に詳しい人から見れば???てな所もありますが、セール素材を含め初めての経験となり、この世界の奥深さが垣間見えました。
次回はあの曰くつきの「偉大な東」号あたりを…、ウワッチ! アブネェ!アブネェ!
艦首附近左舷斜め前方からのアップ、特徴のあるラム(衝角)船首は明治期にフランスで建造され我国に回航途中に遭難した「畝傍」に似ています。舷側から突き出ている203ミリ主砲砲身が垣間見れます。 バウスプリット上には聖アンドレイエフ艦首旗が、そしてメインゲルンマストのトップにはペナント誇らしげにはためきます。
 艦の中央部附近には艦載艇が窮屈そうに搭載されています。1,400tそこそこの排水量でカッター4隻と汽艇1隻を搭載した小さな砲艦に180名の乗組員たちの艦上生活は決して楽ではなかった事でしょう。  
 
艦尾の152ミリ砲直後に配置されたカッター、洋上で敵と遭遇した際には海上に放棄したのでしょうか? 操艦用の大型舵輪が露天艦橋とロワマスト附近に見えます。

ほぼ正面からのショット セールを展開した状態は帆船の美しさが醸し出されます。
製作 国親父座郎 2009.02.15